コラム

受け身の値上げから脱却 「価値」を届ける値決めとは

2026.02.09

こんにちは!コンサルタントの石田和晋です。今回はズバリ『値決め』というテーマでお伝えします。

原材料費が上がり、光熱費が膨らむ日々。多くの経営者が、電卓を叩きながら「あと数円、数十円値上げしなければ…」とお考えのことと思います。しかし、私たちが日々行っているのは、本当の意味での「値決め」でしょうか?このコラムでは日々経営者の皆様を悩ませる「値決め」について考えるヒントをご紹介します。

よくある値決めの方法「積み上げ型」

値決めの方法は、大きく分けて3つの型に分類されます。今のあなたのやり方は、どの類型に当てはまるでしょうか?

・コスト基準型(コスト・プラス法、マーク・アップ法など):商品・サービスの原価に一定の利益を乗せる方法です。利益計算はしやすいものの、顧客視点が抜け落ちてしまいがちです。

・競争基準型(市場価格追随法など):競合サービスや市場価格に合わせる方法です。相場に合わせる形なので考えやすいですが、資本力のある大手企業との価格競争になりがちです。

・マーケティング戦略基準型(プレミアム・プライシングなど): 自社の強みやブランドを基に独自の価格を設定する方法です。これこそが、小規模事業者が選ぶべき道です。

普通に値決めをしようとすると、どうしても原価やコストといった「モノ」基準で考えてしまいがちです。もちろん事業として販売する以上は最低限の利益は必要です。しかしながら、そのように数字を積み上げて出来上がるのはいわば無機質な「値段」です。

「価格」は価値のメッセージ

一方で、優れた値決めは常に「顧客にとっての価値」を起点に考えます。これを「バリュー・プライシング」と呼びます。たとえば以下のような3つのコーヒーがあったとしましょう。

・300円のコーヒー

・500円のコーヒー

・1,000円のコーヒー

おそらく「値段」だけで選ぶのであれば、多くの方が300円のコーヒーを選ぶと思います。(私もそうします。)しかし、それぞれのコーヒーの提供場所、タイミングが以下のようなシチュエーションだったらどうでしょうか?

・300円のコーヒー ➡ 近所のお祭りの屋台で提供される1杯。喉を潤して体が温まるという「飲み物」としての価値がある。

・500円のコーヒー ➡ 郊外のチェーン店舗での1杯。安定した品質のコーヒーとインターネット完備でゆっくり過ごせる店舗。飲み物だけでなくちょっとした仕事や打合せができる「飲み物+空間」としての価値。

・1,000円のコーヒー ➡ 軽井沢の高級ホテルのロビーで提供される1杯。ウェイターの素晴らしい接客と高級豆を使用した独自ブレンドの淹れたてコーヒーを楽しめる。➡旅先での特別な思い出になる「体験」としての価値。

このように値段以外の情報や付加価値が加わると、印象が大きく変わるのではないでしょうか?300円と1,000円の違い。それはコーヒー豆の原価やサービス料といった原価の差ではなく、商品・サービスの“提供価値”をお客様に伝える指標(=価格)の差なのです。

単なる「モノ」を売るのではなく、それによって顧客の生活や感情がどう動くか。つまり顧客のココロを動かす「コト(体験、経験)」を提供できるかが真の価値です。「高くてもぜひ買いたい!」「せっかくだからこれを選びたい!」と思えるような高付加価値をつけることが、利益率を高めることにつながります。商品・サービスが持つ「価値」の「格」を正しく伝えるからこそ、それは単なる数字ではなく「価格」になります。

商品・サービスの「付加価値」を考えてみよう

「そうは言っても、うちの商品には1,000円のコーヒーのような付加価値なんてない…」と諦める必要はありません。価値は「作る」ものです。付加価値を再考し、高めるためのアクションをいくつかご紹介します。

<付加価値を高める例>
①ターゲットに合わせたメッセージを添える
「誰のどんな悩み」を解決するかを絞り込み、その人に突き刺さる名前に変えるだけで、価値の伝わり方は劇的に変わります。例えば「洗顔フォーム」ではなく、「夕方のテカリが気になる30代のための、さっぱり持続洗顔」とすると「私のための商品だ!」というイメージに変わります。

②提供プロセスの演出を工夫する
飲食店であれば、最後の仕上げのソースをお客様の目の前でかける。物販なら、「実はこの商品、店主が30カ所以上の農家を回って見つけたこだわりの一品なんです!」というPOPで商品を紹介する。こうした工夫が「買う」行為から「体験する」行為へと変えていきます。

③魅力的な見た目、ビジュアルにする
SNSで体験をシェアすることが当たり前になってきている今、「見た目」や「ビジュアル」はそれ自体が重要な価値になります。商品を包む紙をワンランク上の質感に変える、店舗のロゴ入りのリボンを使う、お皿のデザインを活かした立体的な盛り付けにする。「自分へのご褒美」や「大切な人への贈り物」という付加価値も生まれます。

④お店をリラックスできる空間にする
商品・サービスそのものだけでなく、ストレスになりがちな購入前後や待ち時間の質を高めることで「安心」「快適」という価値を作り出します。明るく清潔感のある売場にする、待ち時間にリラックスできる季節のお茶を出す、商品の解説やお客様の声といった動画をディスプレイで流すなど、お店で過ごす価値を高めることができます。

⑤お客様と1to1のコミュニケーションをする
小規模事業者が大手と最も差別化できるのは「人」の力です。お客様の名前を覚えて「〇〇様、いつもありがとうございます」と声をかける、好みを踏まえたプラスアルファの提案をする、お見送りの際の一言を添える。単なる「作業としての接客」を「心を通わせるコミュニケーション」に変えることで、顧客にとってそのお店は「○○さんがいるから、そこに行く」という「唯一無二の場所」になり、リピート来店につながります。

まとめ

コスト増に追われて仕方なく行う「受け身の値上げ」を続けている限り、経営の不安が消えることはありません。今、必要なのは、自らの強みを見つめ直し、顧客が何に感動し、どんなことに「価値」を感じてくれるのかを徹底的に考えること。「受け身の値上げ」から「価値を届ける価格戦略」へ。 この転換こそが、物価高騰という荒波を乗り越えるうえで大切な考え方です。

もっと詳しく知りたい、相談したいという場合は、どうぞお気軽に私たちにご相談くださいませ。

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私が担当しました!
石田 和晋

コンサルティング部 コンサルタント

「うちみたいな小さなお店なんて…」と思っていませんか? どんなお店であっても、きっとお客様にご満足いただける魅力や強みがあるはずです。 私は【小さなお店のパートナー】として主にBtoCの小規模事業者や…

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