コンサルティング部 シニアコンサルタント
こんにちは!グローカルマーケティングの山倉です。
皆さんの職場には、こんな悩みはありませんか?
✔ 若手がなかなか育たない
✔ 指示待ちで、自分で考えて動いてくれない
✔ 若手にもっと主体的に挑戦してほしい
未来を担う人財の育成において、多くの経営者や管理職の方がこのような悩みを抱えているのではないでしょうか。
特に、社会全体で推進が急がれるDX(デジタルトランスフォーメーション)や生成AIの活用においては、新しいツールを導入したものの、現場で思うように活用されないというケースも少なくありません。
変化の激しい時代を勝ち抜くためには、自ら考え、行動できる「自律型人財」の育成が不可欠です。
その鍵となるのが、今回ご紹介する「思考の6つの段階」です。
本コラムでは、このフレームワークをDX推進の事例と共にご紹介し、貴社の人財育成のヒントをお届けします。
Table of Contents Plus
「思考の6つの段階」とは?~自律型人財を育てるフレームワーク~
「思考の6つの段階」とは、教育心理学者のベンジャミン・ブルーム博士が提唱した、思考のレベルを6つの階層で示したモデルです。人が何かを学び、習得していくプロセスを分かりやすく可視化しており、自律型人財を育成するための「地図」として活用できます。
各段階は、下のレベルが土台となって積み上がっていく構造になっています。
レベル1:知識
必要な情報やツールの使い方などを「知っている」「記憶している」状態です。全ての基本となる土台です。
レベル2:理解
知っている情報を自分の言葉で「説明できる」状態です。なぜそれが必要なのか、その意味を分かっている段階です。
レベル3:応用
知識や理解を、実際の業務や異なる状況に合わせて「使うことができる」状態です。
レベル4:分析
物事や情報を要素ごとに分解し、違いや仕組みを細かく「考えることができる」状態です。
レベル5:統合(結合)
複数の情報を組み合わせて、新しいアイデアや計画を「組み立てることができる」状態です。
レベル6:評価
ある基準に基づいて、物事の価値や良し悪しを「判断できる」状態です。
自律型人財の育成においては、いきなり高いレベルを求めるのではなく、まずは土台となる「知識」「理解」「応用」の3段階を確実にステップアップさせていくことが極めて重要です。
若手現場監督は、いかにしてDXのキーパーソンになったのか? ― とある建設業の現場から
それでは、この「思考の6つの段階」を、架空の建設会社を物語の舞台として、若手が自律型人財に成長する姿を見ていきましょう。
主人公は、入社3年目の現場監督・鈴木さん。
仕事には慣れてきたものの、基本的にはベテラン監督・佐藤さんの指示通りに動く毎日。「もっと自分で考えて動け」と言われるが、何から手をつけていいか分からず、日々の業務に追われることで精一杯だった。
そんなある日、社長より「生産性向上のため、全社で新しい施工管理アプリを導入する!」と宣言があったのだった。
レベル1:知識(知る)- “とりあえず、覚えるしかない”
数日後、アプリの導入研修が開催された。講師が説明する機能を、鈴木は必死にメモに書き留める。「写真はここをタップして…」「日報の提出は…」。断片的な操作方法、知識だけが頭に詰め込まれていく。
研修が終わり、アプリがインストールされたスマホを手にしても、鈴木にはまだ「便利な道具」とは思えなかった。それはただの「新しいルール」であり、「やらなければいけない仕事」が一つ増えただけ。隣に座る佐藤さんに至っては、研修中ほとんど腕を組んだままだった。
レベル2:理解(わかる)- “もしかして、使えるかも?”
その週末、鈴木は「どうせ使わないといけないなら」と、自宅でアプリを触ってみた。マニュアルを読み返し、研修のメモと突き合わせる。「情報共有の迅速化」「ペーパーレス化」…研修で聞いた言葉が、ふと自分の仕事と結びついた。
「今まで事務所に戻ってから1時間かけて作っていた日報が、移動中の車内で作れるってことか?」
「最新の図面がスマホにあれば、現場で『あれ、これ古い図面だ!』って手戻りがなくなるかもしれないぞ…」。
点と点だった知識が、線で繋がった瞬間だった。
月曜日の朝、彼は少し興奮気味に佐藤さんに話した。
「佐藤さん、このアプリ、僕たちの残業時間を減らせるかもしれませんよ」。
初めて、自分の言葉でツールの価値を説明(理解)できたのだった。
レベル3:応用(つかう)- “これは、武器になる”
その日から、鈴木は意識的にアプリを使い始めた。まずは簡単な写真管理から。次に日報作成。最初は手間に感じたが、月末に集計された自分の労働時間を見て驚いた。残業が、前の月より10時間も減っていたのだ。
本当の転機は、突然のゲリラ豪雨の日に訪れた。
現場の状況が刻一刻と悪化する中、鈴木はとっさにアプリのチャット機能と写真投稿機能を応用した。事務所にいる社長や設計担当者に、現場の写真をリアルタイムで共有し、状況を簡潔に報告。「土嚢はBブロックに集中させてください!」と、遠隔から的確な指示を得ることができた。
被害を最小限に食い止め、社長から「鈴木、あの時の報告は助かったぞ!」と声をかけられた時、鈴木の中で何かが変わった。アプリは「やらされ仕事」から、現場を守り、仕事を前に進めるための「自分の武器」に変わったのだ。
レベル4:分析(わける・くらべる)- “原因は、ここにあったのか”
武器の使い方を覚えた鈴木は、次にアプリに蓄積されたデータに目を向けた。工程管理機能と、過去の日報データを比較してみると、あるパターンが見えてきた。
「どうして、基礎の配筋作業はいつも予定より半日遅れるんだろう…」。
彼は過去数ヶ月のデータを集計し、分析を始めた。
すると、遅延が発生する日は必ず、特定の資材業者からの鉄筋搬入が午前中に集中していることを発見した。搬入、荷受け、検品作業が現場の入り口で渋滞し、作業開始そのものを遅らせていたのだ。これまで誰もが「なんとなく遅れがちだ」と感じていた問題の根本原因を、データが明確に示していた。
レベル5:統合(つくる・まとめる)- “もっと良くできるはずだ”
原因がわかれば、対策は立てられる。鈴木は解決策を考え始めた。彼は、分析した自社のデータだけでなく、資材業者の標準的な配送ルートや、近隣の道路交通情報といった外部の情報も組み合わせた。
そして、一枚の改善提案書を作り上げた。
「鉄筋の搬入時間を前日の夕方に変更し、当日朝一番から作業を開始できる体制を整える。これにより、配筋作業の遅延を解消し、後続作業も前倒しで進められるはずです」。
それは、単なる思いつきではない、データに裏打ちされた、説得力のある新しい計画だった。
レベル6:評価(みきわめる・ためす)- “僕が、現場を変える”
鈴木は、その提案書を手に、佐藤さんと社長に直談判した。
「この計画を実行すれば、この現場だけで2日間の工期短縮と、約50万円のコスト削減が見込めます。試させてください!」。
彼の目には、もう指示を待つ若手の面影はなかった。
データという根拠と、現場を良くしたいという強い意志があった。社長は彼の熱意を評価し、「面白い。鈴木、お前に任せる!」と決断した。
鈴木がリーダーとなり実行した新しい計画は、見事に成功した。予測以上の成果を上げ、彼はその結果と成功要因、そして次なる改善点をレポートにまとめて全社に共有した。
この成功体験は、彼に「自分でも現場を変えられる」という、何物にも代えがたい自信を与えた。
今や鈴木さんは、社内の誰からも頼られるDXのキーパーソンだ。
自ら現場の課題を見つけ、データを活用して解決策を立案し、周りを巻き込んで実行する。
かつての彼のように、何をすべきか分からずにいた後輩たちの相談にも乗っている。
指示を待つだけだった一人の若者が、思考の階段を一段ずつ着実に上り、
会社を動かす「自律型人財」へと成長を遂げた瞬間だった。
まとめ:自律型人財を育てる最初のステップ
いかがでしたでしょうか。
この物語は、単なるツールの導入成功譚ではありません。
若手社員の鈴木さんが、「知識」を得て、それを「理解」し、現場で「応用」するという土台を固めたからこそ、その後の分析や統合といった、より高度な思考レベルへとステップアップできたことを示しています。
多くの企業では、研修でツールの使い方を教える「知識」の段階で終わってしまいがちです。しかし、DXを本当に成功させ、社員一人ひとりが自ら考えて動く「自律型人財」を育てるためには、その知識を「なぜ使うのか(理解)」、そして「実際にどう活かすのか(応用)」というレベルまで、丁寧に引き上げていくプロセスが不可欠です。
社員の「知識・理解・応用」を加速させる研修プログラム
弊社では、社員が自律するための土台となる「知識・理解・応用」の3ステップを確実に習得するための研修プログラムをご提供しています。
単なる知識の詰め込みで終わらせません。
演習やディスカッションを豊富に取り入れ、学んだ知識を「自分の言葉で説明できる(理解)」レベルまで深めます。
さらに、貴社の実際の課題をテーマに、解決策を考えるワークショップを行うことで、現場で「すぐに使える(応用)」力を養います。
生成AIの活用、DXによる生産性向上や、マーケティングの基礎を学ぶ研修など、貴社の課題に合わせて最適なカリキュラムをカスタマイズすることも可能です。
「自律型人財の育成で、若手を未来を創る主役」へ。
人財育成に関するお悩みは、ぜひ一度、私たちにご相談ください。
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