コンサルティング部長
「日々の業務に追われ、数年先のことを考える余裕がない」
「行き当たりばったりの経営から脱却したいが、何から手をつければいいかわからない」
「自分が思い描く会社の方向性は合っているのだろうか?」
多くの中小企業の経営者様が、このような悩みを抱えているのではないでしょうか。
変化が激しく、将来の予測が困難な時代だからこそ、企業の未来を指し示す「羅針盤」が必要不可欠です。
その羅針盤こそが「中期経営計画」です。
本コラムでは「なぜ中期経営計画が必要なのか、どのように策定すればよいのか」について、そのポイントを分かりやすく解説します。
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Table of Contents Plus
中期経営計画は、未来への「架け橋」
中期経営計画とは、一言でいえば「会社のありたい姿(ビジョン)と現状をつなぐ架け橋」です。
3~5年先を見据え「どこに向かうのか」「そのために何をすべきか」を明確にするための具体的な計画書です。
計画なき経営は、羅針盤のない航海と同じです。日々の頑張りが会社の成長に繋がっているのか分からず、社員のモチベーションも上がりません。
明確なビジョンと計画があれば、経営者も社員も同じゴールを目指して進むことができ、組織に一体感が生まれます。
中期経営計画策定のメリット
メリット1:会社の進むべき「北極星」が見つかる
社長と従業員が会社の目指す姿を共有し、組織に一体感が生まれます。 日々の業務に目的意識が生まれ、全員が同じ方向を向いて進む推進力となります。
メリット2:経営判断の「ブレ」がなくなる
計画が明確な判断基準となり、場当たり的で一貫性のない意思決定を防ぎます。 経営資源を目標達成のために集中投下でき、経営の安定化に繋がります。
メリット3:外からの「信頼」という追い風が吹く
金融機関や取引先に事業の将来性を示すことができ、融資や取引で有利に働くケースがあります。 事業承継の際にも、会社のビジョンを明確に伝え、スムーズな引継ぎの助けになります。
メリット4:従業員の「成長」というエンジンが手に入る
会社の目標と個人の役割が明確になり、従業員のモチベーションが向上します。 自らの成長が会社の成長に繋がる実感が、主体的な行動と成長意欲を引き出します。
【5ステップで実践】中小企業のための中期経営計画策定の流れ
では、具体的に何から始めれば良いのでしょうか。
ここでは、中期経営計画策定を体系的に進めるための5つのステップをご紹介します。
今回は、ある地方ハウスメーカーをケーススタディとして見て行きましょう。
ステップ1:「ありたい姿(ビジョン)」を言葉にする
計画策定の第一歩は、「3~5年後、会社をどのような状態にしたいか」というビジョンを明確にすることです。
ここで重要なのは、売上棟数や利益といった目標だけでなく、「社員の物心両面の幸せと成長を追求する」といった定性的な想いも言葉にすることです。上記のビジョンを掲げた場合、その「幸せ」を次のように具体化することができます。
物的な幸せ(給与水準): 地域の同業他社の平均給与を上回る水準を目指し、成果が正当に評価される仕組みを作る。
心の幸せ(仕事のやりがい): お客様の一生に一度の買い物に深く寄り添い、「あなたに頼んでよかった」と心から感謝される仕事を実現する。
成長: 専門知識やスキルを高め、お客様に最高の提案ができるプロフェッショナル集団になる。
ステップ2:ビジョン実現に必要な「投資」を洗い出す
ありたい姿が言葉になったら、次にそれを実現するために「具体的に何が必要か」「どれくらいの費用がかかるか」を洗い出します。夢を具体的な「投資リスト」に落とし込む作業です。
先のハウスメーカーの例では、ビジョンを実現するために以下のような投資が必要だと考えられます。
社員の給与UPやインセンティブ制度導入(人件費増)
最新の住宅性能やデザインを体感できるモデルハウスの建設・リニューアル費用
顧客提案力を高めるための設計ツール(VR/AR等)の導入費用
新規エリアへの出店費用
将来の収益源となるリフォーム・リノベーション事業の立ち上げ費用
このように、やりたいことをリストアップし、それぞれに必要な費用を見積もることで、計画の実現に必要な「原資」が明確になります。
ステップ3:財務シミュレーションで「必要な利益」を算出する
次に、ステップ2で洗い出した投資費用をどう捻出するか、財務の視点から分析します。「今後数年間で、どれだけの利益(剰余金)を生み出す必要があるのか」を計算する、中期経営計画の心臓部です。
例えば、「10年後に自己資本比率50%以上を維持しながら、総額〇億円の投資を行う」という目標を立てたとします。その場合、現在の純資産から逆算して、「10年間で合計〇千万円以上の剰余金を生み出す必要がある」といった具体的な数値目標が導き出されます。
このシミュレーションにより、漠然とした「売上を伸ばそう」という目標が、「毎年3%の売上成長を達成し、〇円の利益を確保し続ける」といった、具体的で現実的な目標に変わるのです。
ステップ4:自社の「現在地」を客観的に把握する
稼ぐべき利益の額が見えたら、次に「どうやって稼ぐか?」を考えるために、自社の「現在地」を客観的に分析します。ここで有効なのが「SWOT分析」の視点で情報を整理することです。
強み (Strengths): デザイン性の高さ、地域密着による高い評判と信頼、特定の工法における技術力など。
弱み (Weaknesses): 営業担当者のスキルへの依存度が高い、アフターサービスの体制が未整備、若年層での知名度の低さなど。
機会 (Opportunities): ZEH(ゼッチ)など省エネ住宅への関心の高まり、中古住宅市場の活性化、オンラインでの住宅相談の需要増など。
脅威 (Threats): 人口減少による新設住宅着工戸数の減少、ウッドショック等に代表される資材価格の高騰、職人の高齢化・人手不足など。
この分析を通じて、自社の武器(強み)と、攻めるべき市場(機会)が明確になります。
SWOT形式で整理をするためにも、外部環境ではPEST分析やファイブフォース分析を行い、内部環境ではバリューチェーン分析等を行いながら進めて行くケースが多いです。
ステップ5:必要な利益を稼ぐための「戦略」を立てる
ここまでのステップで、「ありたい姿」「必要な投資額」「稼ぐべき利益額」「自社の武器」が明確になりました。いよいよ、それらを統合し、具体的な「戦略」を立てます。
先のハウスメーカーでは、分析から見えた重点課題と、稼ぐべき利益目標を達成するために、大きく3つの戦略を立てることができます。
1.既存事業(新築事業)の成長戦略
誰に: 若年層でのニーズを狙う。「若年層での知名度の低さ(弱み)」はSNSでの施工事例発信やWebマーケティングを強化することで克服する。
何を: 「デザイン性の高さ(強み)」を活かし、「省エネ住宅への関心の高まり(機会)」に応える高付加価値なZEH住宅に注力する。
どのように: 「地域での信頼(強み)」を活かし、OB顧客からの紹介制度を強化し、安定的な受注に繋げる。
2.新規事業(リフォーム事業)の立案と収益化
「新設住宅着工戸数の減少(脅威)」に備え、「中古住宅市場の活性化(機会)」を捉え、リフォーム・リノベーション事業を本格的に立ち上げ、新たな収益の柱を育てる。
3.戦略を支える組織基盤の強化
人財: 「職人の高齢化・人手不足(脅威)」に対応するため、若手大工の育成や協力業者との連携強化を進める。
制度: 「営業担当者のスキルへの依存度が高い(弱み)」という現状から脱却するため、顧客満足度も反映した人事評価・給与制度を構築する。
ここまで、中期経営計画策定のポイントを5つのステップで概略としてお伝えさせていただきました。
より具体的な計画策定について知りたい方は以下のページも是非参照ください。
「絵に描いた餅」で終わらせないために
立派な計画書を作っても、実行されなければ意味がありません。計画を確実に実行し、成果に繋げるためには、アクションプランと進捗管理が不可欠です。
「誰が」「いつまでに」「何をするのか」を明確にしたアクションプランを作成し、定期的に(例えば月1回)プロジェクト会議を開いて進捗を確認します。計画通りに進んでいない場合は、その原因を分析し、軌道修正を行います。
中期経営計画の策定は、決して楽な作業ではありません。しかし、そのプロセスを通じて、自社の強みや課題を再認識し、進むべき未来を全社で共有することができます。それは、変化の時代を乗り越えるための、何よりの力となるはずです。
まずは、自社の「ありたい姿」を語り合うことから始めてみてはいかがでしょうか。
しかし、もしこれを読んでいるあなたが、
「自社に本当に合った進め方がわからない」
「客観的な視点で、私たちの課題を分析してほしい」
「第三者の意見を聞きながら地に足の着いた計画を作りたい」
このようなお考えをお持ちであれば、ぜひ一度、当社までお気軽にご相談ください。
グローカルマーケティングでは、中期経営計画を策定して終わりではなく、その計画の実行フェーズ(マーケティング戦略実行支援、採用・育成支援、業務効率化支援等)も一貫してサポートしております。
まずは、私たちがどのようなご支援をできるのか、以下のサービス詳細ページでぜひご確認ください。
▼サービス案内:経営計画策定支援ビジョンに向かって大胆かつ地に足をつけて経営するための羅針盤づくり
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最後までお読みいただきありがとうございました!